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現代のパイロットウォッチには、ミッドセンチュリーデザインからインスピレーションを得たものが数多く存在する。それらの時計は単体では優れているが、クラシックなトリプルレジスター・パイロットクロノグラフのデザインを裏付ける正当な歴史がまったくない。一方でジンはブライトリングよりもずっと若いブランドだが、その歴史は正当なものであり、私は妥当な競争相手だと考えている。
ジンは、80年代にドイツ空軍のパイロット向けに1550フライバッククロノグラフモデルを納入した。3連レジスターを備えた標準的なパイロットクロノグラフではあるものの、レジスターの向きを12時、6時、9時に変更し、3時位置のデイト窓を使いやすくしている。当時のパイロットのニーズを考慮して作られたという点で、ブライトリングのAVI Ref.765 1953 リ・エディションと方向性やスピリッツが近い。103シリーズは60年代に発表され、バルジュー72を採用していたことを除けば、オリジナルの53年型Ref.765ブライトリングと非常によく似たデザインだった。
ジンは、2017年に103の限定モデルを発表し、フォティーナのトレンドに便乗した。そのモデルはすぐに完売してしまったが、通常モデルの103 Stはまだ生産中だ。より親しみやすい価格帯(ストラップ付きなら35万2000円・税込)のパイロットクロノグラフを探しているのであれば、ブライトリングの代替品としても最適だ。
IWC パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41
ミッドセンチュリーの航空マニアとしてブライトリングを検討しているのであれば、IWCはお勧めできない。どちらかというと、現代的で一般的なパイロットウォッチだからだ。しかし、正当な歴史をもつ優れたデザインのパイロットウォッチを所有したいという理由で、ブライトリングを検討しているのであればIWCは有力な比較検討候補となるだろう。どちらも自社製キャリバーを搭載し、3連レジスター(IWCはデイト表示も備える)と大胆なアラビア数字を組み合わせ、空の旅にまつわる正当なヘリテージを受け継いでいる。1本だけのコレクションとして、あるいはパイロットウォッチの世界に足を踏み入れるには、IWCの方が適しているかもしれないが、ブライトリングにはもう少し個性がある。熟練した時計愛好家であっても、部屋の向こう側からこの時計を見分けるには近くで凝視する必要があるが(15分積算計の夜光で見分けがつかない場合は別だが)、IWCならすぐにそれとわかる。
オメガ スピードマスター ムーンウォッチ 321
オメガのマーケティング部門は、何十年にもわたってスピードマスターをムーンウォッチとしてプロモーションしてきたが、登場以来、パイロットにも人気のある時計であったことを忘れてはならない。アポロ時代の宇宙飛行士の多くは、宇宙飛行士である前にテストパイロットであったのだ。また、AVI Ref.765 1953 リ・エディションとの共通点も多い。もっとも、スピーディのダイヤルにアラビア数字はないが。
ブライトリングのCal.B09は、初代スピードマスターに搭載されていた古いオメガのCal.321をベースにしたCal.321と同じ典型的なコラムホイールを採用している。オメガ時計 メンズこの2本の時計は、現代の状況下で可能な限りオリジナルに忠実に作られている。これらは、最先端の製造技術を用いて時代を遡ることを証明した時計だ。スピードマスターは、ブライトリングの2倍弱となる166万1000円(税込)という途方もない価格だが、知名度は10倍だ。しかし、月面着陸が、50年代の実験用戦闘機のパイロットが音速の壁を破ったことほど偉業でないと感じるのであれば、ブライトリングの方が間違いなく価値があるだろう。
結論
ブライトリング収集家に話を聞くと、"旧型"が"新型"ブライトリングよりもはるかに優れていることを教えてくれるはずだ。そして率直に言って、AVI Ref. 765 1953 リ・エディションを着用する前は、正直なところ、それに心から同意していた。当時の時計は明確な目的をもって作られており、オリジナルのAVI Ref.765に搭載されている奇抜な15分積算計のように、当時の機能的な要求から素晴らしいデザインが生まれている。このような背景があるからこそ、私は新しいAVI Ref.765に魅力を感じるのだ。かつての栄光を誇示するために、ひどい妥協をしなければならないような時計ではないのだ。この時計は、私の18.4cmの手首に見事にフィットし、旧モデルのように取扱いに気を遣う必要も感じない。あとはF-104があれば、15分でエンジンをかけられるかどうかを試してみたいところなのだが。